【相談室】とめ・はね・はらいを、どれくらい意識させればいいでしょうか?

Tさん
Tさん

子どもが、ひらがなや簡単な漢字を書けるようになってきたのですが、

学校で配られるドリルなどのお手本に書いてある「とめ・はね・はらい」を、

どこまで意識させればいいのか迷っています。

いるか先生
いるか先生

学校の先生の方針によっては、文字の形をきびしく指導されることもあるので、

困ってしまうこともありますよね…。

ここでは、発達障害のあるお子さんの学習について考えてみましょう。

日本語の文字の難しさ

日本語の文字には、とめ・はね・はらいがあり、印刷文字と手書き文字でも違う部分があります。文字に慣れた大人にとっては当たり前で、ふだん気にも止めない違いですが、子どもによっては、それが文字の読み書きを難しくする一因となっていることがあります。たとえば、

この二つを見て、大人であれば、同じ「サ」の字を表していると分かりますが、文字を学び始めたばかりの子どもには、三画目がつながっている文字と、離れている文字が、同じ文字なのかどうかどうか分かりません。このようにつながっていても離れていてもいい文字があるかと思えば、「れ」「わ」のように、はらう方向が違うだけで違う文字になってしまう文字もあるからです。

お手本を見ながら文字を練習する子どもの様子を見ていると、とめ・はね・はらいを忠実に真似ようとするあまり、文字の情報量が多くなってしまい、かえって文字の骨格が捉えられていないと思われることがあります。

文化庁の指針

このような、手書き文字や印刷文字の違いについて、日本の文化庁は、「常用漢字表の字体・字形に関する指針(報告)」でこのように述べています。


伝統的な漢字の文化が理解されにくくなり,手書き文字と印刷文字の字形のどちらか一方が正しいとみなされたり,本来は問題にしなくてよい漢字の形状における細部の差異が正誤の基準とされたりするといった状況が生じている。
(中略)
字体は骨組みであるから,それが実際に印刷されたり,手で書かれたりする場合は,活字独特の装飾的デザインや,人それぞれの書き方の癖や筆勢などで肉付けされた形で表れる。したがって,ある一つの字体が印刷されたり書かれたりして具体的に出現する文字の形は一定ではなく,同じ文字として認識される範囲で,無数の形状を持ち得ると言える。仮に,文字の形の整い方が十分でなく,丁寧に書かれていない場合にも,また,美しさに欠け稚拙に書かれている場合にも,その文字が備えておくべき骨組みを過不足なく持っていると読み取れるように書かれていれば,それを誤った文字であると判断することはできない。

「常用漢字表の字体・字形に関する指針(報告)」平成28年2月29日文化審議会国語分科会

これは主に漢字の話ですが、つまり、文字の骨組みが合っていれば、「誤っている」とはみなされないということです。

だからといって、「では、どんな文字を書いてもいいのか」といえば、そういうわけではありません。文字は文化であり、コミュニケーションのツールでもあるので、人に通じる文字の骨組みは書けるようになることが望ましいでしょう。

学校で×にされるのではないかと心配

学校教育では、主に国語の書写の時間に「文字を正しく整えて書くこと」(学習指導要領)も指導します。漢字の読み書きの指導と書写の指導とが一体となって行われる場合もあり、中には漢字の書き取り練習においても、とめ・はね・はらいをお手本通り書くことにこだわる先生もいます。保護者の方の中には、家での学習でとめ・はね・はらいにこだわらなくても、学校のテストで×になるので困っている方もいるかもしれません。

たしかに、小さいうちから一画一画を丁寧に書く習慣を身につけることも大切です。しかし、文字の骨組みを捉えるので精一杯な子どもに対して、細かいとめ・はね・はらいに注意させ、さらには○×で評価するのはどうでしょうか。そういった指導により、書くことに苦手意識をもったり、学習の達成感が得られないようでは本末転倒です。

手書き文字は文化であり、コミュニケーションの道具です。まずは、文字を書くのが楽しい、文字で人とコミュニケーションするのが楽しいと思えるようになることが大切です。

教材の選び方

最初に述べたように、書体の違いが学習のしにくさにつながってしまう子どももいます。そういう場合には、なるべく学校で使う「教科書体」に近い書体で学習する方が、学習のしやすさにつながるでしょう。(いるかプリントでは、教科書体をベースに、ひらがなではとめはねをシンプルにした文字を使用しています。)

文字に慣れてきたら、いろいろな書体に触れていくことも大切です。身の回りを見回すと、お菓子のパッケージや街中の看板など、いろいろと工夫された楽しい書体にあふれています。お子さんと一緒に楽しく読むことで、文字の骨組みへの理解も少しずつ深まっていくと思います。

まとめ
  • 発達段階によりますが、まずは、とめ・はね・はらいなどの細部にこだわるより、文字を楽しく学習させましょう。
  • じょじょに文字の骨組みに気づいていけるように、文字に触れる体験を豊かにしていきましょう。
Author
いるか

「いるかプリント」の編集者・ライター。複数の出版社で、国語教材や教科書、特別支援教育関連事業等に20年以上携わる。