発達障害大全 ― 「脳の個性」について知りたいことすべて

要約・内容

発達障害の子を育てる編集者・ライターが、各界第一人者の医師、研究者などに、あらゆる疑問をぶつけてまとめた本です。
◎ 発達障害とは「脳の個性」
◎ 発達障害に必要なのは「治療」ではなく「対応」
◎ ADHDの薬には「劇的な作用」がある
◎ 本当に怖いのは「二次障害」
◎ 発達障害の診断が「自尊感情」を守る
◎ 「IQが高い発達障害の子」は見逃されやすい
◎ 「いじめられやすい子」が主役になれる特別支援学校
◎ 仕事選びで大事なのは「絶対に向かない仕事」を知ること
◎ 発達障害で障害者手帳をとることに損はない ……など。

感想

宣伝コピーに「ありそうでなかった」とありますが、本当にそんな印象の本でした。「大全」というのも大げさではないと思います。
「発達障害」と聞いても、それぞれの立場でしかわからない部分があると思いますが、この本では、親であり編集者である著者が、素直な疑問をいろいろな分野の第一人者に聞くことで、社会全体の像としての「発達障害」が見えてきます。
熱量がすごくて、親の子を思う熱い思いがこの本を書かせたのだと思うと、感動的ですらあります。(あまり周りの人に本を勧めることはしないのですが、思わず勧めてしまったほど)

次のようなフレーズが印象に残りました。

・自分の能力を伸ばしやすい方法を見つけていく。
・つまずくことは悪いことではない。自分なりにやってみて、なにができないか分かってくる。
・音を聞けばわかるからと音声だけで勉強をしていると、文字をまったく見なくなってしまう。すると、読む力が育たない可能性が出てきてしまう。(宇野彰)
・「できないこと」だけでなく、「やればできるかもしれないこと」も見極めていかないといけない。

脳の障害として、医療的・教育的な対応ももちろん必要です。でも、それ以上に、わたしたちの社会全体が、発達障害をだれもが持つ個性として捉えることができるかどうかが問われていると思います。

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発達障害大全 ― 「脳の個性」について知りたいことすべて
黒坂 真由子 (著)/日経BP