
内容
言語学者である著者が、動物を登場人物にしたユニークな寓話を題材に、「言葉がわかる」とはどういうことなのか、人工知能が言葉を扱うとはどういうことなのかを、わかりやすく解説しています。
感想
2017年発行の本ですが、中学校国語の教科書に紹介されていたので読んでみました。
今、チャットGPTの広がりもあり、コンピューターが言葉を理解しているように見えますが、「言葉を理解している」というのはどういう状態のことをいうのか、また、その難しさの一端がわかりました。
学校の国語の教材やテストには、ある程度定型の問題の形があり、それができれば「言葉を理解できている」と評価していますが、本当にそうなのか考えさせられる内容でした。
特に、「文と文との論理的な関係が分かること」や「話し手の意図を推測すること」などはとても複雑で、改めて示されると、こんなに複雑なことを日常的に行っている人間のすごさに気づかされます。
すでに言葉を習得している大人にとっては何でもないことのように思えますが、難しさを理解することは、難しいと感じている子どもの理解にもつながるのではないでしょうか。
寓話も秀逸で、そもそもなぜ人間はコンピューターに言葉を理解させたいのか? なぜあらゆる分野でIT化を進めているのか? など、イタチたちの右往左往する様子に笑いながらも身につまされます。
チャットGPTの登場より前に発行されているようなので、イタチたちにチャットGPTを届けてみたいです。
いつかイタチたちは仕事をしなくてよくなるのでしょうか。そしてそれが本当に幸せなことなのでしょうか。続編があるといいなと思う一冊です。
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働きたくないイタチと言葉がわかるロボット ー人工知能から考える「人と言葉」ー
川添愛 (著)/朝日出版社